Tiramisu郵便

「私をひっぱりあげて」くれる数々のことを、綴ってみることにしました。

野いちごジャムの記憶

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 これは家にあった普通の甘い、いちごジャム。今から書くのは「野いちご」ジャムの話です。小学校2年生の時、好きかもなあって思う男の子がいた。わたしは死にそうなほどドッジボールが大嫌いで、その子も「オレもドッジ嫌いだよ」って言ってた。そこそこボール取れるし、当てられるのに、同じ気持ちで嬉しかった。そしてその子は字がきれいだった。男の子なのに、すてきだな、と思ったことを覚えている。

 通っていた小学校は自然豊かで、ちょっとした山があった。先生と山を散歩したり、友達と探検したり、高学年のおねえちゃんの後について、秘密基地にそっとおじゃまさせてもらうこともあった。ある時、これは食べられる野いちごだよ、と先生が言っていた。わたしが好きだった男の子は帽子にたくさんつんでいた。たくさんたくさん。 

 翌日、先生が「◯くんのお母さんが野いちごのジャムを作ってくれました。◯くんがジャムを配るので食べたい人は並んでください。」と言った。その子は瓶とスプーンを手に持って、恥ずかしそうにちょっと照れて立っていた。クラス中があっという間に並んだ。おいしいおいしい、と言っていた。わたしは食べたかったのに…並べなかった。野いちごジャムの入った瓶は、あっという間に空っぽになった。ああ、あのジャムの味はどんな味だったんだろう。もう30年近く経とうとしているのに気になる。きっと、お母さんとおしゃべりしながら、いっしょにぐつぐつ煮たんだろうな。あの子とあの子のお母さんの優しい気持ちがいっぱいつまった野いちごジャム。 

 そして2年生が終わるころ、その子は転校した。さみしかった。ヘビイチゴで思い出したイチゴの記憶。いつか私も息子といっしょに「野いちご」のジャムを作りたい。