Tiramisu郵便

「私をひっぱりあげて」くれる数々のことを、綴ってみることにしました。

無から有へ

子どもを預け、電車に乗る。

 

本を読む。とてもいいことが書いてある本なのに、全然頭に入ってこない。そわそわする。何度か試みるがやっぱりだめだ。やめた。外の景色を眺める。これからの予定に緊張している。

 

赤ちゃんの泣き声がした。みんなが泣き声のする方を見た。泣き止んだかと思うとまた泣く。お母さんはとても困っているだろうな、何か声をかけようかな、そわそわ。隣の隣の座席の島くらいか。ちょっと離れてるな。立ち上がってわざわざ行くのもなあ。

 

私の隣に親子が座っていた。小学校低学年の女の子とサングラスをかけたちょっと派手なお母さん。

 

「大変だねえ

 メイもあんなことあったんだよ」

 

その派手なお母さんが静かに娘に言った。

 

そう静かに言った途端、赤ちゃんは泣き止んだ。静かになった。そして次の駅で赤ちゃんは降りた。赤ちゃんのお母さんの横顔は疲れたという顔でも、やっと着いた、という顔でもなかった。「無」が近いか。ぼーっとしてる。きっとあの表情で日々過ごしているのだろうな。そうそう、私もよくあんな表情してる。友だちに声をかけられて、はっ!と慌てる時がある。

 

これは一週間も前の話。

 

***

 

ピーンポーン

 

母が来た。はっとする。

私、今「無」の表情だったと気づいた。