おはようティラミス

「私をひっぱりあげて」くれる数々のことを、綴ってみることにしました。

自転車

「九州から来たんだ」

 

東北に住む祖父はいつも私のことをニヤニヤしながらこう紹介した。みんなが遠くから来たねえ、という顔で「へええ」と言った。少しおしゃべりして祖父は私に「行くか」と言って、自転車の後ろに乗せて町中を走った。

 

祖父は私を自転車に乗せるのが好きだったはずだ。私も好きだった。夏休みと冬休み、自転車の後ろに乗ったのは、きっと数えられる回数だと思うのだけど、今になっても『おじいちゃんの自転車に乗ったなあ』と思い出す。

 

田んぼに行き、ザリガニ釣りをしたこと。突然の雨で、知り合いのお店に行きガッサガサの使い古しのタオルが出てきて、おばさんに頭を拭かれたこと。園芸店には何度も行った。祖父の庭は花やら盆栽やらであふれていた。「○ちゃんは福の神だね」と祖父が言ってくれたことがあった。私がお店に入るとお客さんが増えるから、だそうだ。子どもながらに嬉しかったから、そんなことを未だにちゃんと覚えている。


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一番心に残っているのが、寒い冬の日に乗った自転車。なぜかコートを着ないで後ろに乗った私。「おじいちゃん、寒い寒い」と後ろで言っていた。祖父は作業着みたいな紺色のジャンパーを着ていたのだけど、自転車をとめて「ちょっと待てぃ」と言ってそのジャンパーを貸してくれた。中がボアになっていて、ふわふわでそれはとても温かった。「おじいちゃん寒いやろ」返そうと思ったけど「大丈夫、大丈夫」と言って自転車をこいでいた。

 

***

 

娘を自転車に乗せて走りながら、いつも思い出す。祖父の自転車に乗ったことを。祖父の背中を。あのポマードみたいな匂いを。...おじいちゃんもしかして、私の前にいるのか?じつは、私が乗っている自転車、三人乗り自転車だったりして!なんてことを今思ってしまった。

 

自転車に乗るのが好きだ。

 

おじいちゃん、ありがとう。