おはようティラミス

「私をひっぱりあげて」くれる数々のことを、綴ってみることにしました。

ブローチと飴

スーパーの無料循環バスがこの町は走る。

利用するのはほとんどがお年寄りで、

幼い子どもを連れた親子がほんの少し。

私は時々、子どもと気分転換に利用する。

久しぶりに乗った。

 

バスに乗る、というのが子どもたちに

とってはワクワクするようで喜んでくれる。

バス停で、おばあちゃんが娘に話しかける。

 

「何歳?3歳でしょ」

「そう!○○ようちえんにいくの!」

 

にこにこ話しかけてくれて、

娘が嬉しそうにニコニコ答える。

もう1人おばあちゃんが来て

 

「何歳?3歳?」

「そう!3さい!」

 

おばあちゃんズも嬉しそうに笑う。

そんなやり取りを見て私も嬉しくなる。

この交流は最高だと私は思う。

みんな知らないでしょ?と思ったりする。

 

今日のバスは、ステップがなかった。

乗り降りしやすくなるウィーンと

言う出入口にあるあのステップ。

ステップがないと、私ですら、

よいしょ!としなければ登れない。

これは高齢の方、大変だろうなと思った。

祖母がこれで苦労していた。

昔はステップのないバスが多くて、

祖母は必死に手すりにつかまって、

バスに乗っていた。小学生の私の目に

それが焼き付いている。

 

***

 

次の停留所で乗ってきたおばあちゃんは

登れなくて困っていた。運転手さんは

「ゆっくりでいいですからね」

と言ったけれど、

おばあちゃんは困っていた。

 

祖母の姿を思い出す。

私は後ろの席からおばあちゃんの所まで

行って、手を差し出した。

黒い手袋をしたおばあちゃんは

私の手をぎゅっと握ってようやく登れた。

「ありがとうね」

そう言って座った。

おばあちゃんの帽子に金色の葉っぱの

ブローチがついているのが見えた。

 

降りる時はちゃんと踏み台が

用意されていて、ホッとした。

金色の葉っぱのブローチをした

おばあちゃんが、私たちが降りてくるのを

待っていて、ありがとう、と何度も言った。

コートの胸にも金色の葉っぱの

ブローチがついていた。

 

おばあちゃんはコートのポケットを

ごそごそして3つの飴を手のひらに乗せた。

私にレモンの飴、娘に桃の飴をくれた。

黒飴じゃ、いやでしょ?と言って。

 

娘はすぐになめた。

私もなめた。しばらくしたら、

中からレモンの甘酸っぱいとろりとした

蜜が出てきた。

 

***

 

娘が幼稚園に行っても、時々乗ろう。

 

ほんとに、いいバスなんだよ。