何かしてくれるんじゃないか。
あの子は、
あの人は、
何かしてくれるんじゃないか。
***
小さく抱いたそれは
種から出た小さな芽のよう。
その人の心の中で、
ゆっくり育っていく。
いろんなものがかけられて、
育ってしまう。
育ち続けるそれは、
ゆっくりのようで、
勝手にぐんぐん育つ。
あの子は、何かしてくれる。
でも
こちらはもう、何も期待していないんだ。
この時点で、もうズレが生まれている。
はじめは気にしない。けれど、
はっきりと感じた違和感。
お互いが抱く思いは
すれ違う。
***
自転車で通り過ぎた顔見知りのおばさんに、
マスク越しに「こんにちは」と言った。
おばさんは聞こえなかったのか、
聞きたくなかったのか、
目を合わせることなく通り過ぎた。
いつしか娘のように感じていたのだろう。
ごめん、私は娘じゃない。
母娘関係は実の母だけで、もうじゅうぶん。
この関係が私はあまり得意じゃない。
さみしそうに見えたのは気のせいか。
これも
引き受けなければならないのだ。
そのさみしそうな思いを、
そうか、と。
駅に着いたら、
反対のホームに若いカップルがいた。
女の子はフードをかぶって、
ベンチに座り、男の子の隣で
なんとなく力なく座っていた。
女の子の手は
男の子の腕をつかんでいるように見えた。
きっと別れ話。
いくつも電車を見送って、
二人は結論も何もない
会話にもならない話を
空気を吸って、
さよならするのだろう。
***
青空だ!
親指のイボ治療行ってこよ。
液体窒素でジュッとしてこよう。