おはようティラミス

「私をひっぱりあげて」くれる数々のことを、綴ってみることにしました。

ゆっくり

午後4時になろうとしていた。
まだ暑い。
おばあさんが歩いている。

ゆっくりゆっくり。

数歩歩いては立ち止まる。

手すりを持ち、
階段をのぼる。

三段目で休憩。

熱中症、大丈夫だろうか。
そう思うけれど、具合は悪くなさそう。
おばあさんは5、6段の階段を
ゆっくりのぼりきった。

図書館に行くのだろうか。

そういえばこの前、
病院で片側が麻痺したおじいさんがいて、
「ドアを開けましょうか?」
と言ったけれど、
「いい。大丈夫」と言われた。
そんなしなくていいよ、と
ちょっと突き放された感じがした。
でもちょっと気になって、
ちょっと離れたところから見ていた。

おじいさんは、なんてことなく、
だけど、ゆっくりゆっくりドアを開けた。

「年とるってやだね」

ゆっくりとわたしに言った。

なんて返したらいいか分からなかった。

「そんな。...すてきです」

と咄嗟に言った。
おじいさんは何か言いたげだった。
何か言いたそうな目をしていたけれど、
ドアを腕で押して、遠くを見て出て行った。

じりじり暑い。
暑いけれど、風がふくと気持ちが良い。
冷房のきいた部屋からは
想像することができないこの風。
ああ風くん、となぜか今日思った。
風というなにかさわやかくんがいるような、
そんな気が今日はした。

風がいてくれて、本当に良かった。

信号待ちのたびに、
軽くめまいがして気合いを入れ直す。

ああ、この暑さが懐かしい。
そう、夏はこのように暑いんだった。

暑さは、
風と木陰の有り難さを感じさせてくれるなあ。

今日という終わりに、
あのおばあさんのゆっくりを思い出す。
あのおじいさんを思い出す。

ペースはそれぞれにあるんだ。

せかせかするな。
せかすな。

ゆっくり着実に自分のペースで
一歩一歩すすもう。